■パッケージ美人でいい

　普通のブスが見やすくなるには、自分の包装に気をつけるだけでも効果がある。書籍だって「パッケージ買い」というのがあるくらいだから。

　この問題については、本も雑誌もネット情報もいっぱいある。田村麻美の『ブスのマーケティング戦略』においても、「ロングヘア、巻き髪、スカート、パンプス」という｢女子アイコン｣で武装すればブスに見えないと書いてある。

　この方面の知る人ぞ知る名著は齋藤薫の『されど〝服〟で人生は変わる』（講談社、二〇〇九年）だ。必ず読んで欲しい。

　あと、歌手の野宮真貴(のみや まき)の『おしゃれはほどほどでいい——「最高の私」は「最小の努力」で作る』（幻冬舎、2017年）とか『赤い口紅があればいい——いつでもいちばん美人に見えるテクニック』（幻冬舎文庫、2016年）を読むこともいい。具体的な指針に満ちている。

　野宮真貴とジェーン・スーの対談『美人になることに照れてはいけない。——口紅美人と甲冑女が、「モテ」「加齢」「友情」を語る』（幻冬舎plus+、2017年）とか『人生もお洒落も自分の舵を手放さない』（幻冬舎plus+、2018年）なども読むと励まされる。

　野宮真貴さんもジェーン・スーさんも都会的で綺麗なので、「こんな対談集はブスの私の役にたつもんか！」とあなたは怒りに震えるかもしれない。美人でさえ自分の包装には苦労しているのだ。ブスのあなたなら試行錯誤はあたりまえなのだ。

　美人ではないけれども綺麗でセンスのいい人に遭遇したら、貪欲(どんよく)にジロジロ観察させてもらおう。貴重なサンプルだ。

「雰囲気美人」という言葉があるくらいで、美人ではなくても美人のふりをすることはできる。美人ではないのに、美人だと自分を他人に思わせることが巧みな女性というのは存在する。「なに、こいつ～～ブスのくせに美人ぶっちゃって！」と張り倒したくなる気持ちを抑えて、さりげなく見物しよう。学べることは多いはずだ。

　反対に、造作(ぞうさく)は美人なのに、美人に見えない女性もいる。繊細過ぎて、自分が美人であることに照れているのかもしれない。頭が悪くて、情報が足りなくて、センスが悪いのかもしれない。

　もしくは、つまらない人間を寄せつけないために、セクハラ回避のために、安全保障の一環として美人に見せないという戦略を採用しているのかもしれない。美人は美人で苦労がある。

　私の大学院時代の教授や昔の同僚の男性に、人格は下劣で狡猾(こうかつ)で非常に不細工なのに、常にファッションに気をつけ、立ち居振る舞いだけは男前風にしている人々がいた。「こんな不細工で性格も下卑(げび)ていて不快な奴なんか何を着ても同じだ。何を気取っているんだか」と、私は彼らを内心では罵倒(ばとう)していた。

　しかし、彼らが不細工なまま、衣類に無頓着(むとんちゃく)なまま、立ち居振る舞いに気をつけていないままだったら、もっともっと彼らは不快な人間だったに違いない。気をつけていたから、やっとあの程度の不快さですんだのだ。

　だから、ブスでも、自分のパッケージに気をつけることは効果がある。どんどんパッケージ美人になってみよう。雰囲気美人になってみよう。少なくとも、美人のフリをしている女性は、膝や脚を開いて椅子に腰かけていない。ハンカチも持たずに外出しない。電車内で化粧しない。ものの食べ方にも気をつけるだろう。